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映画『バンクーバーの朝日』を観ました!役者も上手だし、街並みのセットも素晴らしい‼︎ でも、ストーリー展開は…

平成27年(2015年)1月24日(土)

 おとといの木曜日(22日)、『バンクーバーの朝日』という映画を映画館に観に行きました。これは、戦前にカナダのバンクーバーに存在した「バンクーバー朝日」という日系人の野球チームを題材とした映画です。

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 明治時代、日本からたくさんの移民が海外に移住しました。中でも、ハワイやブラジルにたくさんの日本人が移住したことはよく知られてますよね〜。

 

 カナダのバンクーバーでは、明治19年に発生した大火の復興のためにたくさんの労働力が必要となり、関西地方を中心に、バンクーバーに出稼ぎして一儲けしようとする人たちがたくさん海を渡りました。

 

 しかし、バンクーバーに渡った人たちは、一儲けするどころか、低賃金でこき使われ、生活は苦しかったそうです。しかも、当時は今以上に、有色人種に対する差別というのが根強くあって、その点でも苦労が多かったみたいです。

 

 しかも、移民というのは社会的地位が弱いために、低賃金でも文句を言わずよく働きます。しかし、それはもともと住んでいた人たちの労働を奪うことにつながります。

 

 ましてや、お上に楯突くことなく黙々と真面目に働くのは、日本人のお家芸みたいなものですから、はじめはよく働くと歓迎されていたバンクーバーの日系移民も、次第に疎ましく思われ、私的にも、公的にも、さまざまな迫害を受けるようになったみたいなのです。

 

 そんな中、日系人たちの楽しみの一つが、野球だったのです。バンクーバーでは、日系人によるさまざまな野球チームが結成され、その中の一つが、大正3年に結成されたバンクーバー朝日だったのです。

 

 私も、バンクーバー朝日の存在自体は以前から知ってはいたのですが、詳しいことはよくわからず、1年くらい前に、バンクーバー朝日を題材にした映画が作られる、というニュースを目にして、楽しみにしていたのです。

 

 楽しみにしていたのです、という割には、昨年末12月20日の公開日から1ヶ月以上も経って観にいく、という相変わらずのスロースターターぶりなんですが、そろそろ上映期間も終わりそうな感じがしたので、観に行ったのです。

 

 それで、感想なんですが…演じた役者さんはみんな上手で、野球のプレーシーンも違和感なかったし、お化粧やヘアメイクも、たぶん当時のものを忠実に再現していて、ホントに昔の日本人って、こんな感じだったんだろうな〜、と思わせるものでした。

 

 それに、なんと撮影のほとんどは、日本国内で行われたのだそうです。栃木県足利市などに当時のバンクーバーの街並みを再現したオープンセットを作ったりしたそうなんですが、とても日本で撮影したとは思えない映像に仕上がってました。

 

 ただ、観終わった後の率直な感想は、「ずいぶん浅い内容の映画だったな〜」ということです(おこがましくてスミマセン^^;;)。野球の歴史好きとして、期待も大きかった分、ストーリーはちょっとイマイチだったかな〜、と私は感じました。

 

 今回、この映画を見るにあたり、一応(?)『伝説の野球チーム バンクーバー朝日物語』(後藤紀夫著、岩波書店)と、『バンクーバー朝日 日系人野球チームの奇跡』(テッド・Y・フルモト著、文芸社文庫)という2冊の本を買って、斜め読みなんですが、少しだけ予習しました。

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 ですので、ある程度、バンクーバー朝日のことを知ってから観たのですが、そのためか、映画は、かなり肝心のことが描かれていないように感じてしまったのです。

 

 私が読んだ2冊の本には、「頭脳的なプレー」と「紳士的なプレー」の2つが、バンクーバー朝日の特徴だった、と書いてありました。映画では、前者については丁寧に描かれていましたが、後者についてはなぜか、ほとんど描かれていなかったです。

 

 バンクーバー朝日は、ターミナル・リーグというところに加盟していました。このリーグは、バンクーバー朝日以外は、すべて白人によって構成されたチームが加盟するリーグだったのです。

 

 当初、バンクーバー朝日は、万年最下位のようなチームでした。それで、体力では白人にかなわないと思ったバンクーバー朝日の選手たちは、バントを多用したり、足を絡めたりと、今で言う小技を効かせた「スモールベースボール」でどんどん強くなっていったのです。

 

 2冊のうちの片方にしか書いてなかったことなので真偽は不明ですが、そもそもバンクーバー朝日がなんで白人のチームに混じってリーグ戦に参加できたのかは、「チビのジャップを打ち負かす強い白人たち」という構図を、リーグとして作りたかったからみたいなんです。つまり、初めからバンクーバー朝日は「ヒール(悪役)」としての役割を”期待”されていたのです。

 

 だから、バンクーバー朝日が強くなると、白人チームは、ラフプレー(暴力的なプレー)で嫌がらせをしてきたり、審判も明らかにバンクーバー朝日に不利な判定をするようになります。

 

 ところが、予期せぬことが起こりました。今まで見たことがない「スモールベースボール」を新鮮に感じた白人の間でも、バンクーバー朝日のプレースタイルは「ブレイン・ベースボール(頭脳を使った野球)」だと言われて、なんと白人の間でもバンクーバー朝日を応援する人が出てきたのです。

 

 でも、本によると、白人にもバンクーバー朝日のファンが増えていった理由は、ブレイン・ベースボールに対する評価のみならず、その紳士的なプレースタイルに対する評価にあったのです。

 

 バンクーバー朝日は、武士道にも通じる日本人の誇りを守るため、どんなにラフプレーをされても、自分たちはラフプレーを絶対にしない、どんなに審判に理不尽な判定をされても、一切抗議はしない、というプレースタイルを守り通したのです。

 

 欧米では、ひどいことをされたのに黙っているのはバカと一緒で、相手に完全に屈服したと受け取られる、だから主張しない日本人は世界中からバカにされる、という言説をよく耳にします。そういう面もあるのかもしれませんが、少なくとも、当時のバンクーバーの白人たちは、そうは取らなかったようです。

 

 バンクーバー朝日のクリーンな野球は白人の心もつかみ、ある試合では、誰が見ても白人チームがアウトのプレーなのに審判がセーフの判定をして得点が認められた時、観衆が審判を取り囲んでフェアな判定をしろと吊るしあげたことがあったそうなんですが、なんと抗議した人の大半が、白人の観衆だったそうなんです。

 

 こんな感動的な事実が記録として残っているのに、映画では、バンクーバー朝日がひたむきにフェアプレーをして白人の支持を得ていく、という描写はほぼゼロでした。

 

 映画では、白人によるラフプレーや審判のインチキはちゃんと描かれていたんですが、バンクーバー朝日の紳士的な部分の描写がないので、突然白人の観客が審判に「フェアにジャッジしろ」と詰め寄っている感じになっていて、たぶん予備知識なく映画を見た人は、「白人ってやっぱり公平な目を持った人たちだな」とか「バンクーバー朝日が強くなったので白人も応援するようになったんだな」ぐらいしか思わないと思いました。

 

 しかも、きわめつけは、チームのキャプテン、妻夫木聡さん演じるレジー笠原がバッターボックスで、相手の白人投手にわざと頭部にデッドボールを投げつけられ、怪我をしてしまうシーンです。それをベンチで見ていた亀梨和也さん演じるチームメイトのロイ永西が、なんとベンチを飛び出して、相手投手を殴ってしまうのです。

 

 これにより、チームは出場停止となってしまうのですが、そのペナルティが解けたとき、レジー笠原とロイ永西が、殴った相手のピッチャーに謝りに行って、相手チームと打ち解ける、という描かれ方をしているんです。

 

 たとえ、そういう事実が当時あったのだとしても、私は(えっ、取り上げるのそこ⁈)って思っちゃいました。もしかしたら、キャプテンのレジー笠原が頭にぶつけられたので、正義感にかられたロイ永西が敵討ちをする、という、男の友情みたいな面を描きたかったのかもしれませんが、それなら別にバンクーバー朝日を題材にしなくていいと思いましたね〜。

 

 いくらラフプレーされたからとはいえ、バンクーバー朝日の選手が先に手をだす、という展開にしたのは、「やられたらやり返す」という欧米的考え方がベースになっている感じがして、少なくとも当時のバンクーバー朝日が貫いたフェアプレー精神を反映していない描かれ方だな〜、と思っちゃいました。

 

 バンクーバー朝日を題材にした映画を作っていただいたのは、ホントにグッドジョブだと思います。この映画がなければ、今回映画を見た大半の人はバンクーバー朝日というチームの存在自体知らずに一生を終えたことでしょうし、私も、もしかしたら2冊も本を買うことはなかったかもしれません。

 

 それだけに、もう少し、当時の白人の理不尽さと、それに黙って耐えフェアプレーを貫き、次第に白人にも共感を得ていった日系人、という流れでストーリーを展開してほしかったな〜、と私は感じたのです。