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代ゼミはなくなってしまうのか!?

平成26年(2014年)9月6日(土)

 先月、河合塾、駿台予備学校と並んで3大予備校の1つと言われる代々木ゼミナール(代ゼミ)が、全国27校舎のうち20校舎を来年3月に閉鎖し、40歳以上の講師、職員に早期退職を勧告、さらに、全国規模の模擬試験を廃止する、といったリストラ策を実施すると発表し、受験業界に大きな反響を与えたようです。

 

 1991年には、全国に大学受験生(いわゆる浪人生)が29万人もいたのに、今年度は8万5000人にまで激減しているそうです。この数字は、来年以降も年々下がっていくことでしょう。

 

 これは、もちろん少子化の影響もありますが、それとは逆に、この30年の間に、大学の数は増え続け、今や学校を選ばなければ、進学を希望する高校生は全員、どこかの大学に入れる、という状況になりましたので、主に浪人生を相手にしている予備校はどこも経営が苦しくなっているようです。

 

 とくに代ゼミは、他の予備校に比べて、私立文系を希望する受験生に人気があったそうです。しかし、この20年間の日本経済の低迷により、私立より国公立、文系より理系、浪人するくらいなら現役で、という志向が強まって、3大予備校の中では代ゼミだけが「ひとり負け」の状況が続いていたそうです。さらに、「今でしょ!」でおなじみになった東進ハイスクールが、現役高校生をターゲットにし、各地の校舎に有名講師の授業を遠隔ライブ配信することで地域密着をはかり業績を伸ばしたのに対し、代ゼミは全国の一等地で大規模校舎を展開し、そこに大量の受験生を集めて、マスプロ的に対面授業を行う、というスタイルにこだわったことも、凋落の一因になったようです。

 

 このニュースを受けて、ネット上では、代ゼミの経営の失敗だ、とか、代ゼミは倒産するのではないか、などの意見が多く見られました。実際、この20年間で、日本最古の予備校と言われた研数学館や、テレビでバンバンCMが流れていた両国予備校などが経営破綻していますので、ここにきて、こんな大胆なリストラ策をしなければならないほど、代ゼミも相当ヤバいんだな、と思われるのも当然です。

 

 でも、ネットでいろいろ調べてみると、実情はそうではないらしく、代ゼミの経営陣はなかなかしたたかな戦略的経営をしているようなのです。

 

 リストラ策を受けて、代ゼミは今後、小規模校舎を各地に展開し、そこにライブ授業を配信する、という方針を発表しました。つまり、東進ハイスクール型に転換する、ということです。これにより、代ゼミは人件費や校舎維持費といった固定費を大幅に削減できることになり、むしろ財務状況は改善する可能性が高いです。

 

 じつは、衛星を使って全国に授業をライブ配信するというシステムは、代ゼミがいち早く取り入れたものでした。実は私も20年くらい前に代ゼミの新潟校に通ったのですが、その時も校舎の上に衛星放送用の大きなパラボラアンテナが立っていて、教室では東京の代ゼミで行われている授業が大スクリーンに映し出されていました。予備校は、入試というペーパー試験対策の学校ですので、座学だけで十分成立する学校であり、ライブ配信でもなんら不都合はないのです。

 

 さらに、今回のニュースでちょっと驚いたのですが、全国各地の一等地に建つ代ゼミの校舎のほとんどは、なんと土地、建物ともに自社物件が多いそうです。それを聞いて、今まで受験生相手にどんだけ儲けていたのか、という気もしましたが、代ゼミは今後、閉鎖する校舎を商業施設などに転換する予定だそうです。実際、京都にあった校舎はホテルに転換され、名古屋の校舎もビジネスホテルを中心とした複合施設に建て替えられるそうです。

 

 それで思い出したのですが、30年くらい前に代ゼミが新潟に進出してきた時、受験生の親の間では、予備校が失敗してもいいように、校舎は始めからホテルに転換できるよう設計されている、という噂がありました。今回は閉鎖の対象外でしたが、新潟校の校舎は元NHK新潟放送局があった場所で、新潟駅から徒歩5分という好立地。ホテルに転換しても十分に収益が見込めるエリアなのですが、今回のニュースを聞いて、その噂もあながちウソではなかったのかな〜、なんて思いました。

 

 つまり、今後代ゼミは予備校経営だけではなく、不動産事業にも本腰を入れるということになって、企業としての基盤は他の予備校に比べ強固になっていくと思います(ただし、代ゼミを運営する高宮学園は学校法人。他の予備校は株式会社なのに、なぜ代ゼミは学校法人化しているのか、これももしかしたら、経営陣の何らかの意図があるのかも)。

 

 そして、予備校経営という不安定な事業だけではなく、他の事業の柱も強化されれば、過度に他の予備校との競争に巻き込まれることなく予備校サービスの充実がはかれる可能性がありますので、代ゼミは倒産どころか、むしろ予備校の中では勝ち残っていくのではないか、とすら感じさせます。

 

 さらに、代ゼミは2009年〜2010年にかけて、首都圏では絶大なブランド力を持つ、「サピックス」という小・中学生向けの学習塾を買収し、子会社化しました。少子化になったことでむしろ、子供一人にかける教育費は増大し、大学受験予備校とは反対に、低年齢向け学習塾は追い風となっているようです。

 

 低年齢向けの学習塾では、やはり、少人数対面授業が基本で、しかも、通学の利便性から、小規模の校舎を多地域に展開する、というのが主流です。これまでは、代ゼミはサピックスを傘下におさめても、思うようなシナジー効果が上げられていない、という評価があるみたいですが、今後、代ゼミが小規模校舎を展開するとなると、サピックスと同じ校舎に代ゼミも同居する、ということが進み、校舎賃貸料の節約や一体的なマーケティングリサーチ、地域密着の広告宣伝ができる、というメリットが生まれてくる可能性があります。

 

 それと、全国規模の模擬試験を廃止することも、驚きをもって受け止められているようです。というのも、受験生にとって予備校が最も重宝されるのは、自分がどの大学なら合格できそうか、という情報を提供してくれるからです。

 

 そのため、より多くの受験生に模試を受けてもらい、母集団を大きくして、より精度の高いデータを集めるのに、どの予備校も躍起になっています。そして、全国展開して大量の予備校生を集める代ゼミは、この点で優位に立っていたはずなのに、自ら全国模試というお宝を放棄しようというのですから、驚かれるのも当然です。

 

 でも、これも、偏差値表で受験する大学を決めていく、というやり方自体が、今後、古いやり方になっていく、というのを見越したのかもしれません。最近では、各大学も、知識偏重のペーパー試験だけでなく、多様な方法で入学選抜を行っているみたいですし、昨年、内閣の諮問機関である教育再生実行会議が、センター試験を廃止し、高校3年間の学習到達度をみる新試験への移行を提言したりして、いままでのように、統一的・画一的な、一発勝負の入試方法で大学に入るという時代は終わりを告げるのかもしれませんね。

 

 大学受験生が減っていくことは、10年以上前から言われていたことであり、代ゼミがそのことに手をこまねいて、今回、行き当たりばったりで慌ててリストラを実行することになった、ということは、ちょっと考えられません。

 

 衛星配信、不動産の取得、小・中学生向け学習塾の買収、大規模校舎の閉鎖、全国模試の廃止、という動きを見ていると、代ゼミは時代の動きを常に注視して先手先手を打って、なかなか巧妙かつ冷淡に経営というものを考えていて、簡単にこけるような企業(学校法人)ではないな、ということを、今回のニュースを知って、感じました。